フリーランス(個人事業主)には無い「給与所得控除」
~ サラリーマンは税制上も優遇されている ~
スポンサードリンク節税のために会社を辞めてフリーランスになる??
ネット上の掲示板で、次のような趣旨の質問を見かけたことがあります。
「システム開発に関わる仕事をしている会社員です。
来年、給料が大幅に上がるので税金が高くなってしまいます。
そこで、会社を退職してフリーランスとして独立し、現在の会社との雇用契約を請負契約に変更してもらい、税金を少なくして手取額を上げられないかと思うのですが可能でしょうか?」
この質問をされた方は、報酬を上げるためではなく(会社員のままでも報酬が上がることは決まっているのに)、税金を安くして手取り額を上げるために、フリーランスになろうかと考えているというのです。
どうやらこの方は、フリーランスになれば、必要経費が増えて、サラリーマンよりも納税額を安くすることができると安易に考えておられたようですが、これはとんでもない勘違いです。
サラリーマンで独立を考えている方には(おそらく具体的に深く考えているというわけではないのでしょうが)、このような勘違いをされている方が結構いらっしゃるようです。
それだけの理由でフリーランスになるのは、絶対にやめましょう。
節税を考えるのであれば、独立した後の税金を考える前に、会社員として今支払っている所得税額の算出方法を知っておく必要があります。
それを知ることで、サラリーマンがどれだけ優遇されているかもわかってきます。
個人事業主の「所得額」
個人事業主の場合、「所得額」は、大雑把に言うと 売上-(仕入+必要経費) で算出します。
フリーランスSEの場合、仕入が発生することはまずありませんから、 売上-必要経費 が所得となります。
サラリーマンの「所得額」
これに対し、給与を会社から受け取るサラリーマンは必要経費を算出する必要がありません。
必要経費のかわりに、「給与所得控除」というものがあるからです。
給与等の収入金額から、この「給与所得控除額」を差し引いたものが、「給与所得」となり、これが個人事業主の所得に該当します。
「給与所得控除」の金額は、収入に応じて決まっています。
それはつまり、個人事業主のように事業に必要で実際に出て行ったお金だけを経費にするのではなく、出て行っていないお金も経費参入できるということなのです。
給与等の収入金額が、1,625,000円以下 のとき、550,000円
給与等の収入金額が、1,625,000円丁 1,800,000円以下 のとき、収入金額 × 40% - 100,000円
給与等の収入金額が、1,800,000円超 3,600,000円以下 のとき、収入金額 × 30% + 80,000円
給与等の収入金額が、3,600,000円超 6,600,000円以下 のとき、収入金額 × 20% + 440,000円
給与等の収入金額が、6,600,000円超 8,500,000円以下 のとき、収入金額 × 10% + 1,100,000円
給与等の収入金額が、8,500,000円超 のとき、1,950,000円
※令和2年分以降からこの金額となりました
例えば、「給与所得控除」額は、年収600万円の場合で、 164万円です。
(ここでいう600万円には、非課税交通費は含まれません)
年商が600万円のフリーランスSEが、164万円の必要経費を使うのは、かなり大変でしょう。
パソコンを毎年買い換えて、勉強のために毎月10冊くらいの書籍を購入しても、164万円にはとても届きません。
もし専用の事務所を借りるのであればその家賃は経費となるので必要経費額はあがりますが、その場合、サラリーマンのときには必要のなかった家賃が財布から出て行くことになるので、税金は安くなっても手元に残るお金は減ってしまします。
サラリーマンの給与所得控除は、何もしなくても税金を勝手に安くしてくれるという、個人事業主にとってはとても羨ましい決まりなのです。
また、税金だけでなく社会保険料の半分は会社が負担してくれるので、サラリーマンの手取収入は多くなります。
節税は楽ではない
このサイトでは、個人事業主の年金と保険のページで、社会保険の代わりとして効果があるものをいくつか紹介しています。その掛金(支払い)は、必要経費として算入できるか、あるいは所得控除(所得金額の算出後に課税対象から外されます)できるため、節税効果はありますが、支出は増えて手取り収入が減ってしまうことは結局避けられません。
「フリーランスとして独立すれば、なんでも必要経費にして税金を安くできる」と思っているなら、それは幻想です。
安易に会社を辞めて後悔することがないよう注意してください。
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