専従者の退職金制度

~ 小規模企業共済、中小企業退職金共済 ~

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法改正

法改正によって、平成23年より専従者が共済に加入して退職金を準備することができるようになりました。
専従者も、小規模企業共済または中小企業退職金共済のどちらかに加入することで、節税ができます。

小規模企業共済 共同経営者の加入

※小規模企業共済の詳しい解説はこちらです。

平成23年1月1日に「小規模企業共済法の一部を改正する法律」が施行されました。
この改正により、「個人事業の経営に携わる個人」(=「共同経営者」)が加入できることとなりました。

個人事業主にとっては、配偶者などの専従者を小規模企業共済に加入させることで、節税できるようになった可能性があるということです。

配偶者や親族であるかどうかは共同経営者の要件に含まれません。
次の要件を満たす人が、一事業主につき二名まで加入が認められます。(括弧内の証明書類が必要です。)

・従事する事業の個人事業主が小規模企業者であること(個人事業主の確定申告書など)
・事業の重要な業務執行の決定に関与していること(個人事業主と締結した共同経営契約書の写しなど)※共同経営契約書は加入時に作成するもので可
・共同経営者としての業務執行に対する報酬を受けていること (青色申告決算書など)

青色専従者として給与を渡している人が小規模企業共済に加入できれば、その人の所得税や住民税の納税額を減らすことができます。給与の金額によっては、専従者の所得税額を0円にすることもできるでしょう。
また、税務署に認められる範囲であれば、専従者の小規模企業共済の掛金分は給与額を上げても、税額は上がらないことになります。

中小企業退職金共済

中小企業退職金共済とは、中小企業のための国の退職金制度で、独立行政法人 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部 が運営しています。略して「中退共」と呼ばれます。
この共済に加入した中小企業や個人事業主は共済契約者となり、原則として従業員全員を加入させ「被共済者」とします。
企業(事業主)は中退共に掛金を納付し、従業員は退職時に中退共から退職金を直接受け取ることができます。

※中小企業退職金共済の詳しい解説は「中退共で個人事業専従者にも退職金を」に記載しています。

掛金の月額は、5,000円から30,000円の間の16種類の金額から選択することになります。
掛金は全額経費算入することができます。
受け取れる退職金は、勤務期間が長いほど手厚くなります。

・11月以下 → 支給なし
・12月以上23月以下 → 掛金納付総額を下回る額
・24月以上42月以下 → 掛金相当額
・43月以上 → 運用利息と付加退職金が加算される(長期加入者ほど有利)

かつては、中退共は個人事業主であるフリーランスには縁のない制度でした。
なぜなら、中小企業退職金共済では、事業主と生計を一にする「同居の親族のみを雇用する事業所」および「個人事業所の配偶者」については、加入することができなかったからです。
大抵のフリーランスには専従者以外に常時雇用する従業員はいませんから、被共済者とすべき人がなく、中退共は無縁の制度だったのです。

しかし、平成23年1月1日施工の、中小企業退職金共済法施行規則の一部改正によって、加入対象者範囲の見直しにより、個人事業所の専従者も一定の条件を満たしていれば「従業員」として加入できるようになりました。

次の条件を満たす場合は、「同居の親族のみを雇用する事業所」の配偶者などでも、中退共に加入することができます。(但し、掛金助成の対象とはなりません。)

・(加入する従業員は)小規模企業共済制度に加入していない
・加入する際に以下の書類を提出できる
 - 申込み従業員についての確認書(加入時に中退共本部より送られる確認書)
 - 労働条件通知書の写し(ない場合は労働条件確認書)
 - 賃金の支払いがあることが確認できる書類(賃金台帳の写し等)

専従者はどちらかに加入できる

中退共の加入条件にも記載があるように、専従者は、小規模企業共済と中小企業退職金共済の両方に加入することはできません。
共同経営者、従業員のどちらであるかによって、加入できる共済が異なるのです。

どちらの共済に加入するかを決めるとき、専従者が共同経営者なのか従業員なのかは、実際にはケースバイケースで、単純に決められないことも多いでしょう。
節税という観点でどちらに加入するかを決められるとするなら、一見、掛金限度額が高い、小規模企業共済が有利に見えます。

(掛金限度額 小規模企業共済→70,000円 中小企業退職金共済→30,000円)

但し、専従者の年収によっては、必ずしも小規模企業共済の方が節税につながるとは限りません。
小規模企業共済は、あくまで被共済者本人からの控除となります。専従者の年収が103万円以下ならそもそも控除できる金額は0円です。専従者の年収が180万円だったとしても、専従者が確定拠出年金(401K)を年に80万円以上拠出していれば、小規模企業共済に加入しても節税効果はありません。

これに対して中小企業退職金共済は、将来退職金を受け取るのが専従者となる点は小規模企業共済と同じですが、その掛金は、事業主の経費扱いとなります。
よって、専従者ではなく、事業主本人の所得を減らすことができるのです。また、経費なので、個人事業税も安くなります。
専従者の給与が少ないのでこれ以上は控除を増やしても無駄だという場合でも、中退共なら事業主自身の所得を減らして節税につなげることができるのです。

例として筆者の場合は、フリーランサー(個人事業主)+専従者(妻)だけの事業所ですが2011年に中小企業退職金共済に加入し、専従者の退職金を積み立てはじめました。
家計に影響が出ないように、もともと加入していた妻の確定拠出年金の掛金を減額してその分を中小企業退職金共済にあてた形です。
こうすることで、妻の所得税は上がりますが、事業主である筆者の所得税と個人事業税が下がるため、世帯でみると総支出額が抑えられることになるのです。

但し、個人企業でも専従者以外にも常時雇用する従業員がいる場合は、中退共に加入すればその人の掛け金も支払わなくてはならなくなり、節税以前に事業主の負担が大幅に増えてしまいます。

福利厚生という観点での中退共の加入を検討する場合はともかく、たんに節税(=節約)が目的なら家族以外の従業員までを加入させるのは本末転倒です。
家族以外にも従業員がいる個人事業主が節税を考えるなら、中退共より小規模企業共済の方が向いているといえるでしょう。

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